菌糸ビンの使用方法

クワガタの大型作出に必需品とも言える菌糸ビン。オガが菌糸によって分解されることで、幼虫が吸収しやすくなり成長が良くなります。

キノコとクワガタの幼虫の2種類の生物を扱うことになるため管理には注意点もありますが、菌糸ビンは大型個体が作出だけでなく、成長スピードが早くなるメリットがあります。菌糸ビンの簡単な使い方について紹介します。

菌糸ビンて何?

自然界ではクワガタの幼虫は木材不朽菌に分解された朽木で育ちます。
木材腐朽菌は、木質に含まれるリグニンを分解可能な唯一の生物であり、その作用があって初めて、クワガタが利用できる状態となります。

菌糸ビンはそんな朽木を再現するために、オガコにキノコの菌を植え付け、キノコの菌糸にオガコの成分を分解させて幼虫を育成するためのアイテムです。

幼虫が消化吸収しやすいので、成長が良く、大型個体を得るのに非常に適しています。

選ぶためのポイント

ヒラタケか?カワラか?シワタケか?

弊社取り扱いの豊富なラインナップ

菌糸ビンに使われているのはヒラタケ系(オオヒラタケ等を含む)、カワラタケ系、シワタケ系などのキノコ菌です。飼育種や目標にあわせて選びましょう。

ヒラタケ
オオヒラタケ
最も普及した菌種です。
カワラタケ ややクセのある種類の飼育に用いられます。
シワタケ 特に根食い系の種類の飼育に威力を発揮します。

種類から選ぶ逆引きおすすめ菌床

クワガタの種類から選ぶおすすめ菌床の一覧です。

クワガタの種類 おすすめの菌床
オオクワガタ・グランディス系 ヒラタケオオヒラタケ
アンタエウス・シェンクリング系 シワタケヒラタケオオヒラタケ
ヒラタクワガタ シワタケヒラタケオオヒラタケ
大型ノコギリ・フタマタ・シカ ヒラタケオオヒラタケカワラタケシワタケ
タランドゥス・オウゴンオニ カワラタケ
ニジイロ ヒラタケオオヒラタケ カワラタケ シワタケ
※ホソアカ、小型の色虫、ミヤマ、小型ノコギリ、ツヤ系はマット飼育がおすすめです。 マットはコチラ

成長に合わせた容量

幼虫の成長に合わせて菌糸ビンの容量を選びましょう。使用環境や種類によって異なりますが、通常は羽化までに3〜4本を使い、3ヶ月に1度程度交換するのが一般的です。

菌糸カップ 割り出し直後の初齢幼虫。
500cc~1000cc 初齢~2齢幼虫・羽化予想サイズ70mm未満の3齢幼虫、大型種のメスの幼虫。
1000cc~1500cc 羽化サイズ70mm以上のオスの幼虫。
1500cc以上 羽化サイズ80mm以上のオスの幼虫。

代表的なものは?

XL-POT 実績十分。菌糸の持ちが良く使いやすい当店愛用の菌糸ビン。
G-pot 信頼、実績十分なフォーテック社製。安定供給も魅力の一つ。
大夢 カワラ系ではギネスの実績を多く持つこだわりメーカー。
微創研 独自のシワタケ菌床など。

幼虫を入れる

産卵用のセットで幼虫が取れたら菌糸ビンに投入することになります。できる限り早いうちから菌糸ビンに入れたほうが大型個体に育ちますが、菌糸に巻かれて死ぬ確率も高くなります。
産卵セットの中で、幼虫がある程度育ってから菌糸ビンに投入すると菌糸に巻かれる可能性が低くなります。

幼虫を菌糸ビンに入れる前に、必ず移動前のマットや菌糸ビンと、投入予定の菌糸ビンの温度を合わせます。

菌糸ビンの蓋を開けると表面まで菌糸に覆われています。幼虫を投入する前に表面の菌糸を取り除きます。

ここまで綺麗に取る必要はありませんが、幼虫が潜っていく穴の菌糸もきちんと取り除きます。

取り除いたら真中の穴から幼虫を入れます。穴の無い菌糸ビンの場合は幼虫が潜りやすいように穴を掘っておくと良いでしょう。
幼虫を移動させるときは、幼虫の食べたマットや糞を少量だけ一緒に菌糸ビンに入れてあげます。

後は幼虫がしっかり中まで潜ったことを確認してふたを閉めて適温になる場所に保管します。

ビン交換

菌糸ビンの中で幼虫が育ち、菌糸ビンの白い部分が減り、幼虫の食べた後が目立ち始めたらいよいよビンの交換です。幼虫の成長具合や大きさ、オスメスに合わせて次のビンのサイズを選ぶと良いでしょう。特に大型オス個体では大きな蛹室を作るため、ビンのサイズを大きくする必要があります。

幼虫の食痕が目立ってきたらビン交換です。菌糸ビンの劣化が目立つ場合や、中に水分が溜まってしまった場合も菌糸ビンを交換した方が良いでしょう。

幼虫を傷つけたりしないように注意しながら、食痕をたどって幼虫を掘り出します。後は菌糸ビン投入時と同様に幼虫を新しい菌糸ビンに移します。
新しい菌糸ビンと古い菌糸ビンは必ず温度を合わせてから幼虫の移動を行い、幼虫と一緒に古い菌糸ビンの食べカスを入れてください。また、幼虫を素手で触るのも厳禁です。

後は成虫になるまでに2回程度ビン交換を行なっていきます。蛹になったら振動や刺激を与えないように注意する必要があります。
ビンの底や端で蛹になってしまった場合は羽化不全を防ぐために、ビンの向きを変えたり人工蛹室を使用すると良いでしょう。

菌糸ビン取扱の注意

  • 菌糸ビンは暑さに非常に弱いため冷暗所に保管してください。また菌糸の活動により菌糸ビンの中の温度は、外気よりわずかに上昇します。中の幼虫の育成に最適な温度になるように温度管理してください。

  • 菌糸ビンは雑菌に弱いため取扱時には十分に消毒したスプーンなどを使ってください。

  • 菌糸の活動により菌糸ビン内部が酸欠となる場合があります。酸欠の場合、幼虫が菌糸ビンに潜らなかったり、暴れたりします。そのときは一度菌糸ビンの蓋を開け、通気のために菌糸に穴を開けて下さい。

こんなときは…

  • 菌糸ビンに青いカビが生えてきた。

    問題なく使用できます。気になるようでしたらその部分だけ削ってしまっても問題ありません。

  • 菌糸ビンからキノコが生えてきた。

    15~18℃程度の温度で、温度差があるときや、光や振動などの刺激を与えるとキノコが生えてきます。若干の栄養分の減少があるものの問題なく使用できます。生えたキノコが菌糸ビンのフィルター部分に穴を空けてしまうことがあるので取り除いてください。

  • 菌糸ビンの底のほうに黒っぽいヘドロのようなものが溜まっている。

    幼虫の食べた菌糸カスが劣化している恐れがあります。有害なガスを出すときもあるので、早急に菌糸ビンを交換してください。

  • 菌糸ビンに水分が溜まっている。

    菌糸ビン内には結露水や、キノコから出る水分が溜まることがあります。膜状になった菌糸は水分を透過しないので、使用には特に問題ありません。しかし、幼虫の食べた部分のオガに水分が吸収されると劣化が早まることがあるので、様子をみて水を捨てたり、菌糸ビンの交換を行ってください。

  • 保管はどうすればいいの?

    5℃以下の冷暗所、冷蔵庫なら1ヶ月程度の保管が可能です。また数週間程度なら20℃以上の場所でも問題ありません。30℃以上になるところでは菌糸ビンが劣化してしまうので高温は避けてください。15~18℃の場所ではキノコが生えやすいので保存場所には適しません。

  • 幼虫が潜っていかない。

    菌糸ビン飼育が適さない種では菌糸ビンに潜ろうとせず、幼虫が暴れることがあります。また菌糸ビンが温度変化を受けた後や、菌床ブロックを詰めた直後などは菌糸が再生しようと活性化するためビン内の酸欠になり、幼虫が潜らずに暴れることがあります。フタを空けて2~3日程度おいてから再度幼虫を入れてください。また菌糸ビンに穴を空けたり、大きな幼虫を入れたりすると、菌糸ビン内の菌糸が切断されるため菌糸が再生しようと活性化します。このときも酸欠になりやすいので注意が必要です。