クワガタはカブトムシに比べ種類数が多く、生態、ライフサイクルもバラエティに富んでいます。飼育やブリードも実に奥が深く、飼育方法も種類によって異なる点もあります。しかし飼育する上で多くの共通点もあり、菌糸ビンにより幼虫の飼育が容易な種もあります。ここでは一般的なクワガタの飼育について紹介します。





熱帯のイメージが強いクワガタですが、標高の高い冷涼な地域に住むものも多く、基本的には高温の環境に非常に弱いです。陽のあたらない場所で管理し20℃〜25℃程度の温度を保つようにしましょう。また、乾燥にも弱いので霧吹きなど適度な湿度を与える必要があります。

日本のオオクワガタ等は越冬が可能で寿命も長く、気候の似た中国や朝鮮に生息する種は保温設備がなくても飼育可能な種もあります。



飼育の基本は単独飼育。交尾のとき以外はオスとメスを分けた方が良いでしょう。特に大型のヒラタクワガタ等はオスがメスを殺してしまうことも少なくありません。セパレートできるプラケースがとても便利です。



観察をメインとする場合、チップ状の粗いマットを薄く敷き、転倒防止にとなる止まり木やエサ皿が必要です。あとは高温に注意し、乾燥したら霧吹きで加水しましょう。


カブトムシ程ではありませんが大型のクワガタは非常に大食漢です。エサは切らさないようにし、小バエ防止のためにも古くなったエサはすぐに捨てましょう。また長い大アゴを持つ種ではエサが食べづらいことがあるのでゼリーを容器ごと切って与える必要があります。


産卵後のメスは次の産卵のために高タンパクのエサを必要とします。各メーカーから産卵、長命を目的とした栄養価の高い製品もあるので用途に応じて与えてください。

決して人間用のゼリーや水分の多いスイカなどは与えないで下さい。


成虫の飼育では小バエやダニ、マットのにおいが気になることがあります。各メーカーの防ダニ剤や消臭剤を使っても良いでしょう。

ブリードには向きませんが防ダニ効果のあるマットもオススメです。







カブトムシ、クワガタの飼育の醍醐味ともいえるブリード。まずは産卵させることから始まりとなります。クワガタは種類によって産卵木、マットを使い分ける必要があります。


産卵木に卵を産むタイプのクワガタは、種類によって好む材の種類、固さが違います。産卵材は数時間〜1日程度水に浸し、陰干ししたものを用います。


樹皮を剥くことで産卵時にメスがつける産卵マークを見つけやすくなります。メスが産卵木に潜るきっかけのために、産卵木に少し穴を開ける場合もあります。

産卵木が準備できたら、ケースに入れ、産卵木が少し見える程度までマットを敷きます。メスを入れ産卵が確認できたら産卵木を入れ替え次の産卵に備えます。

産卵木の幼虫はそのまま材の中で育てることもできますが、産卵木の中で卵が孵化し、幼虫がある程度育ったら、産卵材を割って中から幼虫を取り出します。

その後菌糸ビンや発酵マットに移して成虫まで育てます。



マットに産卵する種は、カブトムシに近い産卵セットを用います。
プラケースの底から数cmは微粒子の発酵が進んだマットを固めに敷き、残りは緩く敷きます。産卵木とマットの両方に産卵する種では産卵木も埋めておく必要があります。産卵するメスの転倒防止の木や樹皮を入れましょう。

産卵用セットに交尾済みのメスを入れて様子を見ます。固く詰めたマット付近で卵や幼虫が確認できたらメスを別のケースに移します。

マット内の温度、湿度に注意して、幼虫がある程度大きくなるまでこのケースの中で育て、大きくなったらケースを移します。







クワガタの幼虫の育成は、種類によってマット、菌糸ビンを使い分けます。材で育成することもできますが大型個体の作出が難しく上級者向けといえるでしょう。菌糸ビンの使用にはいくつかの注意点がありますが、大型個体の作出が容易で、成長も早いです。

産卵木、マットから孵化した幼虫を取りだし、菌糸ビンに投入して育成します。菌糸ビンはしっかりとした温度管理が必要で、特に夏場の高温では劣化も早く、中の幼虫を危険にさらすことになります。


菌糸ビンの白い部分が少なくなり、食痕が目立ってきたら次のビンに交換します。

蛹になったら振動や刺激を与えないように注意して羽化を待ちます。羽化後体が固まったらビンから取り出しましょう。

菌糸ビンは幼虫の成長具合やサイズ、オスメスで容量を使い分け、3本程度で成虫になるのが理想的です。

マットでの育成が適した種は、カブトムシの幼虫と同様に育てるか、ビンに固めに発酵マットを詰めて育成します。

土化したマットを好む種はカブトムシの幼虫で使用したマットを使うと良いでしょう。